息子が幼稚園児の頃の事。
妻が(息子からすると母親ですので以降は母親で表記します)おやつをだすと必ず母親に三分の一程渡すのです。
「お母さんの分」
と言って。
ある時ロ-ルケ-キとジュ-スをおやつに出しました。
ジュ-スは普段コップに入れて出すのですが、ラッパ飲みをしてみたいというのでペットボトルのままテーブルに置いた。
息子は案の定ロールケーキを母親に差し出し
「お母さん少し食べて」
と言ってきた。
母親は少しだけもらって嬉しそうに食べていた。
息子は母親の顔をニコニコしながら見て、その後ペットボトルのジュ-スをラッパ飲みしていた。
一口飲み終えると
「はい!!飲んで良いよ!!」
ペットボトルを母親に渡してきた。
「は~い ありがとう~」
母親は笑顔でペットボトルを受け取った。
そしてペットボトルを見て笑いながら
「これはお母さんは要らないかな~」
と息子に言うと
「嫌だお母さんにあげるから飲んで!」
と懇願してきた。
母親はその顔を見ると飲まないわけにはいかず
「少しだけもらうね~」
と言って一口飲んでペットボトルを息子に渡した。
私は何気なくそのペットボトルに目をやると、息子が持っているペットボトルの中身には果肉入りジュ-スでもないのに何やら沢山浮いているのです。
目を凝らすと、ロ-ルケーキを頬張って食べた後にラッパ飲みをしたペットボトルには息子の口の中からロールケーキが沢山入ったようです。
ロ-ルケ-キを頬張ったままペットボトルに口をつけて飲んだ結果です(笑)
母親は笑顔でペットボトルを受け取ったのですが、その直後苦笑いをしていた。
しかし母親として息子の厚意を踏みにじるという選択肢はなかった。
息子は母親がペットボトルのジュ-スを飲んでくれてご満悦です。
息子が母親を見つめながら嬉しそうにしている顔が今でも頭に浮かんできます。
息子にとって母親の笑顔は最高のご褒美だったのだろうと思います。
母親も苦笑いをしながらも幸せそうな顔をしていました。
息子の笑顔は母親にとっても最高のご褒美だった筈です。
そんな息子は30歳を過ぎましたが、スイ-ツが人数分ない事がわかると母親に
「食べてよいよ~ 余ったら食べるわ~」
と言います。
母親優先です。
ペットボトルのジュ-スには果肉以外の異物が浮いている事はないですけどね・・・(笑)