バス停前に小学生と思われる少年が立っていた。
何となく気になったので少し眺めていると斜めがけのショルダ-バックからスマ-トフォンを取り出して話し出した。
大きな声で話し出した少年の声を聞いているとお母さんのようだ
「お母さん 今からバスに乗るからバス停に迎えにきて」
と言って電話を切った。
初めての一人旅なのだろうか?
不安もあるが、きっと楽しいのだろうなと思う反面
無事に帰りなさいよと呟いてしまった。
そんな少年を眺めながら思い出した事があった。
私は小学4年生頃に鼻の調子が悪くなり耳鼻科へ通院しなくてはならなくなった。
バスで30分程のところに評判の良い耳鼻科があったのでそこへ行くことにした。
母親と耳鼻科で診てもらうと暫くは週一回通院するようにと医師の指示があった。
母親は仕事をしていたのだが週一回仕事を休む事が難しかった。
そこで私に言ってきた
「一人で病院へ行ける?」
バスや鉄道に乗る事が好きだった私は即座に
「うん 大丈夫 行ける!」
と返事をした。
嬉しかった。
次の週から私の楽しい一人旅が始まった。
バス代がいくらだったかは憶えていないが、母親はバス代の他に小遣いとして500円をくれた。
このお金は好きに使って良いと言われていたので、バスの一人旅+500円で嬉しさは倍増していた。
当時のバスは車掌さんからワンマンになったばかりの頃だった。
まずバスに乗る時に整理券を取る事が楽しかった。
座席に座るとバスが走り出す。
バスに乗る度に同じ景色の筈なのに何故か見ているだけで楽しい。
こんな楽しい気分でバスに乗っていると目的地が近づいてくる。
私は終点で降りるのだが
「次は終点〇〇〇です」
とアナウンスがあると『次降ります』のボタンを一早く押す。
これが又楽しい。
終点だから押さなくても良いのだが押さずにはいられなかった。
こんな感じで病院へ行き、診察・鼻の吸入をして終了。
後は帰るだけなのだが、この後私には最大のお楽しみがあった。
病院が終わってからバスの時間までは1時間位あったのだが、その時間を利用して食堂に行くのだ。
店の名前は『みどりや食堂』
この食堂へ行き、ラーメンかカレ-ライスを食べる。
時には、ラーメンとカレ-ライスの両方を食べる事もあった。
記憶では
ラーメン(醤油)・・・250円位
カレ-ライス・・・200円位
だったような気がする。
いずれにしても500円あれば両方食べられた。
これが最高に旨かった。
最初に母親と病院へ行った時に、この店に入りラーメンを食べた。
食べながら母親に500円の小遣いでこの店に来ても良いか確認した。
母親は
「好きなように使って良いと言ったからね 良いよ」
と笑いながら言った。
その後店の人に
「この子が一人で食べにくると思いますから宜しくお願いします。お金は持たせますから。」
というような事を言ったような気がする。
当時の私にとっては外食は最高の贅沢だった。
それも一人での外食だ。
何回か通ううちに店の人が私の事を常連扱いしてくれて
「今日はラーメン?カレ-ライス?」
なんて直ぐに聞いてくれるようになった。
そして、どちらを頼んでも大盛にしてくれた。
値段はそのままで。
この後バスに乗って帰宅するのですが、晩御飯は普通に食べてました。
運動好きな私はどれだけ食べても全く太る事はなかったですね~。
今では食べた分だけしっかり体重が増えていきます(;^_^A
今から40数年前の事です。
母親もよく一人で行かせたな~と思います。
携帯電話も無い時代に。
時代ですね・・・。