三つの騒ぎ

昔の事になりますが単身赴任をする事になりグル-プ企業の寮に入る事になりました。

部屋は備え付けのクロ-ゼットがある六畳一間です。

寮母さんがいるので食事は事前に頼んでおけば作ってくれます。

その他、大浴場があり24時間入浴可。

洗濯機・乾燥機が設置されていて無料で使えます。

こんな感じなので結構快適な生活でした。

そんなある日、別部署のAさんが私のところへわざわざやって来て

「寮に入ったんですってね どうですか?」

と聞いてきた。

「快適ですよ」

と答えると

「そうですか それなら良かった。何か変わった事はないですか?」

とちょっと不適な笑みを浮かべながら聞いてきた。

「変わった事?」

と私は言いながらAさんを見ると何か嫌な感じだ。

「何かあるんですか?」

と聞くと

「まあ いずれはわかる事だろうから教えておきますね。あの寮で10年程前に亡くなった人が居るんですよ。その人が出る!って話しで、お祓いまでした事があるんです。」

話しを聞いていると、どうやら訳ありの亡くなり方のようだ。

私は「いやいや何だよこれ、入寮前に説明すれよ~」と思いながらも

「そうなんですか 毎日快適に生活してますよ」

と言ってやった。

Aさんの眼と口調は「可哀そうな奴」って感じだったので少し腹が立った。

それと同じく何の説明もなかった会社にも腹が立った。

この話しを私と同じ部署の少し先輩社員のKさんに聞くと

「知らないの!?有名な話だよ!!」

と、これ又腹が立つ言い方をしてきた。

『知らんわそんな事、俺は単身でここに異動になってきたの!!』

と喉まで出かかったが我慢して

「へ~有名なんですか~ 私の以前の勤務地までは聞こえてこなかったですね~」

と言うと

「そりゃそうだよこの地区の事だからね」

と言ってきたので

「そうでしょう この地区だけの有名な話は異動してきたばかりの私は知らないんですよ~」

と返すと

「そうだよね」

とぼそっと言っていた(笑)

ここには20人程が入寮しており、私は7年近く生活をしてきましたが何回か騒ぎがありました。

<騒ぎ その一>
『足元に人が 事件』
深夜に
「おい 起きろ!!」 
と大きな声が聞こえてくる。
部屋から出ると、酒を飲み過ぎた隣の部屋のおじさんが廊下で寝ていた。
他の部屋の人がトイレに行こうとした時に、このおじさんに躓いたらしい。
このおじさんは飲み過ぎると廊下・玄関に寝ている事があるそうだ。
室内で寝ているのは良い方で夏には寮の駐車場に寝ていた事もあったという事だ。

<騒ぎ その二>
『女性の悲鳴 事件』
深夜1時過ぎに若い女性の悲鳴が聞こえた。
びっくりして部屋を飛び出した。
女性の悲鳴だ何故寮内?寮母さんは60歳を過ぎている筈。あの声は寮母さんではない(笑)
と考えていると大浴場の方から声がする。
行ってみると悲鳴の主であろう若い女性とその横に、この寮に住んでいる若い男が立っていた。
どうやら女人禁制の寮に彼女を連れ込んで、深夜で誰も来ないだろうと二人で入浴していたらしい。
そこへ廊下で寝る常習犯のおじさんが酔っ払って入っていったらしい。
おじさんビックリ!!
しかし、このおじさんは何も悪くない。何時に入っても良い風呂だ。
悪いのは女人禁制の寮に彼女を連れ込んだ若い男なのだ。
よくやるよ。
この後一応寮長と名の付くグル-プ企業の50歳代の社員に、しこたま怒られたらしい。

<騒ぎ その三>
『お香 事件』
私の息子と彼女から誕生日プレゼントとして何故かお香をもらった。
一人でストレスを溜めずにリラックスして下さい というものだった。
私としてはプレゼントが何であろうと嬉しかったのですが、お香は意外でした。
早速焚いてみると、これが良い香りなんです。
すっかり気に入ってしまい、それから毎晩お香を焚いてました。
そんなある朝、仲が良くなった人と食堂で朝食を食べていると
「寮母さんが、最近線香の匂いがするのよ~と険しい顔をしてるのよ」
と言ってきたので
「あっ それ俺!寮母さんに言っておくわ!」
と説明して一件落着。

こんな冒頭とは無縁な騒ぎがありました(笑)

因みにですが
私が住んでいた7年間で一度だけですが、深夜に何となく目が覚めたのです。

目が覚めてから少しして、クロ-ゼットの掛けてあったバスタオルが「バサ~」っと音をたてて落ちました。

一瞬固まりました。

洗濯をしてハンガ-に掛けたのですが、掛け方が悪かったのでしょう・・・(笑)